「脳梗塞」

脳梗塞は、動脈硬化で脳の動脈が狭くなったり、
心臓などから血栓がはがれて流れて来たりして、
脳の血管が詰まる病気だ。

脳細胞に栄養や酸素が送られないと細胞が死に、
半身まひなどの後遺症や死亡につながる。

脳梗塞のほか、脳内の血管が破れる「脳内出血」、
脳血管にできたコブ(脳動脈瘤)が破れる
「くも膜下出血」の3疾患を合わせて脳卒中と呼び、
患者は計約140万人。

死因別では、がん、心臓病に次いで3番目に多い。
脳卒中の死亡者のうち、脳梗塞が6割以上を占める。


「「脳血管が血栓(血液の塊)によって詰まる脳梗塞は、
毎年8万人以上の命を奪う怖い病気だ。

これまで根本的な治療がなかったが、
血栓を溶かす新薬「t-PA
(組織性プラスミノーゲン活性化因子)」が
保険適応され、脳梗塞治療は新たな段階を迎えた。

ただ、副作用も少なくないだけに、使い方に
十分な注意が必要だ。

>> 脳梗塞

「発症から3時間以内に投与」

「搬送された時はほとんど動けなかったり、
話せなかった人が、後遺症なしに退院するケースが
増えている」。

大阪府吹田市の国立循環器病センター内科脳血管部門の
峰松一夫部長は、tPAの効果を実感している。

保険適用から今年6月末までの約9カ月間に同センターで
投与した30人の患者のうち、3週間後にほとんど
後遺症を残すことなく症状が回復したのは
4割強(13人)。

一般に脳梗塞で発症前と同じ状態に回復するとされる
「約2割」を大きく上回る。

ただすべての脳梗塞患者にtPAが
使えるわけではない。

「発症から3時間以内に投与する」という厳しい条件
があるからだ。

病院到着後、画像診断や血液検査などに要する
約1時間を差し引くと、発症から病院への搬送時間は
「2時間以内」が求められる。

このほかいくつもの投与基準があり、実際に同センター
は30人に投与したが、搬送された脳梗塞患者の数%に
過ぎないという。

>> 発症から3時間以内に投与

「tPAによる治療を最優先」

近年、欧米など世界40か国では、脳梗塞の
発症後3時間以内で、血栓が自然に溶けたり
破れたりして生じる「出血性脳梗塞」がまだおこって
いない状態の場合は、tPAによる治療を最優先
すべきとしている。

「わが国でも臨床試験を行ったところ、発症の
3時間以内で、しかも医師がtPAの使用が適切と
判断したケースでは、37%の人が3か月以内に
ほとんど後遺症のない状態で、社会復帰できる
というデータが得られました。

これは米国の試験結果とほぼ同じです。
日本脳卒中学会が中心となり2004年春に発表した
ガイドラインのなかでも、特定の条件を満た
す脳梗塞に対しては、この治療法を強く推奨しています。

>> tPAによる治療を最優先